「電子印鑑」という言葉を聞いたことはありますか?
紙に印鑑を押すように、PC上の文書ファイルにも署名・捺印できるようにするためのシステムです。
最近では実物の印鑑とセット販売されることも増え、電子印鑑について知らないとは言えない状況になってきました。
2005年に「e-文書法」が施行されて以来、実務で紙ベースの書類を扱う機会は確実に減っています。ここ10年では、実物の印鑑ではなくコンピュータ上での押印が常識になるかもしれません。
そこでこちらのページでは、これからビジネスの常識になり得る「電子印鑑」の種類から、実際にどのように業務に使用するのかなど、会社で印鑑を取り扱う人は必見の情報を紹介していきます。
目次 [非表示]
目次
そもそも「電子印鑑」ってどんな印鑑?
電子印鑑はその名の通り、パソコン上で書類に印影を張り付けることで「この書類は人の目で確認されている」ということを証明するためのもの。書類の作成をweb上で行うことができ、印鑑を用意する必要がなく、紛失や破損をすることがないという非常に便利なものです。
とはいえ
「電子印鑑なんて見たことがない」
といった方も多いかと思います。
しかし、電子印鑑と同じような署名方法として、タブレットに表示された書類にタッチペンで記名する方法があります。スマホの機種変更や自宅の設備点検の際、サインした覚えのある人も多いのではないでしょうか。
これの印鑑版が「電子印鑑」です。
電子印鑑によるメリット・デメリット
【メリット】
電子印鑑を使用する最大のメリットは、書類作成の効率がアップし、印鑑本体の破損や紛失といったリスクを防ぐことができるという点です。
また、電子印鑑に対応している文書作成ソフトを導入していれば、わざわざ書類を発行した後に押印する、という手順を省けることもメリットですね。
【デメリット】
上記にもありますが、電子印鑑は対応している文書作成ソフトを導入する必要があります。
ツールやソフトの導入にはコストが発生しますし、電子印鑑の特性上、多少のweb・パソコンの知識が必要です。
また、法人企業の場合、契約書を渡す取引先が電子印鑑に理解があるかどうか、といった点もネックになる場合があります。
このように、電子印鑑は印鑑と違い、まだ誰もが知っていると言えるほど普及していないため、現段階では多少のデメリットが存在します。
しかし、上記の通り便利であることは間違いないため、すぐに利用する予定がない方も、メリット・デメリットや効力について事前に知っておくことをおすすめします。
意外と使用されている!どんなところが導入しているのか
電子印鑑がすでに普及し始めている例として、会社設立時の手続きが挙げられます。企業が法人登録する際は、経営に関する約束事をまとめた「定款」作成が義務付けられています。
以前は紙で作成されることがほとんどでしたが、最近では低コストで済む「電子定款」を作成する企業が主流になってきました。
電子定款では、偽造や悪用を防ぐため専用ソフトで登録をします。この登録をすることで、会社名義の印鑑(社判)の印影がPDF上に表示されます。
このような形で、会社の設立や官公庁手続きに関しては電子印鑑の認知度が高くなりつつあります。
これらの電子印鑑の特徴から、個人に比べ企業において普及が進んでおり、近年では法人印(社判)は電子印鑑を利用しているという会社が増加しています。
公文書への使用もOK!官公庁手続きの電子化が本格化
通常通り印鑑を捺印したり、手書きのサインで認証する方法があるにも関わらず、なぜ電子印鑑が必要とされているのでしょうか?その理由は、官公庁手続きの電子化が本格化していることです。
最近の大きな電子化の流れとして、法人税の電子申告の義務化(2020年度分~)が挙げられます。
行政手続きのコスト削減のため、一定規模以上の企業はオンラインで税申告しなければなりません。
申告書類にはマイナンバーカードや法務局発行の識別番号が使用されますが、今後は各企業の会社実印(印鑑登録された社判)が必要になる可能性もあります。
そのため、今後は電子印鑑を扱えないと、仕事やプライベートで困ることが出てくる可能性も考えられます。
今のうちに電子印鑑の大まかな仕組みだけでも知っておき、備えておきましょう!
知らないと悪用されるリスク高!電子印鑑の種類と作成方法
紙ベースの情報と同様、ネットに繋がったパソコンのデータには偽造や不正使用など、悪用されるリスクがあります。よって、電子印鑑も何らかのセキュリティや個人識別手段を施さないと、簡単に他人に悪用されてしまいます。
では、電子印鑑のセキュリティとはどのようなものでしょうか。
実は、電子印鑑には様々な作成方法があり、それによって「効力」「セキュリティ」が違います。
画像加工ツールやofficeソフトで作る電子印鑑
印影の画像を電子データに貼り付けたいだけであれば、次の方法で作成するのが簡単です。
・紙に押した実物の印影を読み込む
・officeソフトの画像編集機能を使う
・通販サイトで電子印鑑を購入する
いずれかの方法を選び、あとは必要な時に印影データを読み込んで、書類の適切な場所に表示させるだけで捺印完了です。
実際に捺印した印影を利用する場合
無料のwebサービスやofficeで電子印鑑を作成するのは不安、という方もいらっしゃるかと思います。そんな方は、手元にある印鑑の印影を電子印鑑にしましょう。
専門店で作成した印鑑をスキャン、その後画像データに変換して利用することで、セキュリティの高い電子印鑑を作成することが可能です。
wordやexcel、無料ソフトで作成する場合
多くの人が使用しているofficeソフトの「word」「excel」「powerpoint」で電子印鑑を作成できるのは驚きですね。excelやwordに含まれている機能を用いて電子印鑑を作成します。
非常に簡単に作成できる方法ではありますが、ツール内のフォントは誰でも利用できるため、公的な書類に使用することはできません。
印鑑の通販サイトで電子印鑑を購入する
通販サイトによっては、電子印鑑として「印影の画像」を作成し販売している店舗もあります。無料で自作するよりも複雑な書体で、かつ鮮明な画像になりますので、webで自作するのは手間・不安という方に向いている作成方法です。
【方法別】注意点・効力まとめ
作成方法 | 効力 | メリット | 危険性 |
---|---|---|---|
無料ツール officeソフト | 印鑑としての効力は無し 公文書に使用不可 | 無料で作成可能 簡単な手順のみ | 他人も同じ印影を簡単に作成できる 偽造されやすい |
通販サイトで作成 | あくまで画像。 実印や銀行印としての使用は不可。 | 複雑な書体 作成が楽 鮮明な画像 | 画像データのためコピーすると不鮮明になっていく |
実物の印影を スキャンする | 電子印鑑として使用可能 | オリジナル性が高い 費用をかけずに作成可能 | 画像データから印鑑本体を偽造される可能性 |
上の表にもありますが、電子印鑑の作成は意外にも簡単です。
しかし、これらの方法では公文書に使えなかったり、セキュリティに課題があるといったデメリットがあり、実物の印鑑にある「同意署名」の役割を果たしません。また、いつ誰が押印したのかわからない点もデメリットになり得るので注意しましょう。
では、セキュリティが高く、安心して使用できる電子印鑑はどのように作成すればいいのか、下記で紹介致します!
高セキュリティ・法的効力のある電子印鑑の作り方
官公庁などで採用されている正式な電子印鑑では、印影の画像データに、持ち主の識別情報・タイムスタンプ(押した時間の記録)を付与したものを利用しています。コピー防止のセキュリティ機能もついているため、これなら実物の印鑑と同様に安心して扱えますね。
この種の電子印鑑として最も多く使われているのが、AdobeのPDF作成ソフト「
どちらのサービスも有料になりますが、pdf文書に対応しており、電子印鑑の利用を検討している方にとって一考の価値がありますよ!
特に「パソコン決済」には、オーダーメイド・個人認証などのセキュリティ対策といった、偽造や不正使用などの悪用を防止する機能がついており、電子印鑑としての法的効力を保証してくれるおすすめのサービスとなっております。
実物の印鑑と比較して法的効力は低いの?
電子印鑑について読み進めるほど「目の前で紙に押印してもらうのが一番信頼できるのでは?」という疑問が沸く人もいるのではないでしょうか。しかし現実には、次の2つの印影は法的効力が実質同等になりつつあります。
確かに「目の前で印鑑を押す動作」が重要視されてきた歴史はありますが、時代の変遷とともに直接対面せずに契約をする場面も増えています。
それに合わせる形で電子印鑑のニーズが高まり、使用者も増加していることが背景です。
印鑑を押した人とタイミングが分かるのであれば、実物も電子印鑑も変わりません。
コスト削減に繋がる電子印鑑のほうが、むしろメリットが大きいと考える経営者も増えてきている程です。
まとめ
「電子印鑑」は今後、行政手続きや企業の業務コスト削減のために一気に普及することが予想されます。実物の印鑑や画像編集ソフトさえあれば作ることは出来ますが、それだけでは印鑑としてまったく効力を持ちません。
官公庁で活用されているのは、いずれもコピー防止機能や識別情報付きの電子印鑑です。
今後電子印鑑がスタンダードになる前に、事前に作り方や効力について知っておくと、いざという時に慌てずに済みますね!
印鑑購入の際に同じ印影でデジタル印鑑を作ることも出来るので、気になった人は試しに作ってみてはいかがでしょうか?